押川研究室

理論物理学

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仁科記念賞の受賞にあたって 

仁科記念財団 から、今年度の(第71回)仁科記念賞を「量子スピン系の数理的研究」に対し田崎晴明さん(学習院大学理学部)と私の共同で受賞させて頂けるとの発表がありました。 非常に名誉な賞で、誠に光栄です。推薦して下さった方、選考に関わった方々に深く御礼申し上げます。

さらに、私が量子スピン系の研究を始めるきっかけを与えて下さった田崎さんとの共同受賞ということもあり非常に嬉しく思います。 私が量子スピン系の研究を始めたきっかけは、 別の場所にも書いた通り、大学院に入学したての修士1年時に「物性若手夏の学校」で 田崎さんの講義に出席したことです。 そのときに講義から学んだことと、後に学習院を訪問してKennedy-Tasaki変換の未出版の原稿をお借りして、Kennedy-Tasaki変換を 一般のスピン量子数に拡張したのが私の最初の学術論文 になりました(かつ、後から見ると、Symmetry-Protected Toplogical相の概念に かなり近いところに行っていました)。 また、一見別の話であるLieb-Schultz-Mattis定理の一般化や、Cu benzoate等の反強磁性鎖における磁場誘起ギャップなどの 研究も、その原点はこの最初の論文にあります。田崎さんには感謝してもしきれません。

皆さんご存知のように、田崎さんには他にも非常に優れた業績が多数あり、単独で受賞されるべき方だったと思います。 私もおまけで受賞させて頂くのは恐縮ですが、田崎さんから学んだことをいくつか拡張して少しは恩返しできたかも しれず、そのことに対する評価としても有り難くお受けしたいと思います。

これまでの私の研究も、 田崎さんだけでなく、故・伊豆山健夫先生、甲元眞人先生、永長直人先生、故・Ian Affleck先生をはじめ、 多くの先生・先輩方、友人・同僚・共同研究者の方々に恵まれたおかげです。 また、日頃よりさまざまにサポート頂いている秘書をはじめスタッフの方々や 家族にも改めて感謝したいと思います。 これからも精進していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

2025年11月4日 押川正毅

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仁科記念賞

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