これまでの研究成果(+余談)

これまでの発表論文全体については、

などをご覧ください。

以下には、これまでの研究成果(論文)の一部と、研究の経緯などを紹介します。 自分で気に入っているという判断基準ですが、気まぐれも含むので、必ずしもここに取り上げたものが取り上げていないものよりも重要であるとは限りません。 また、研究の発端から書いていくと、昔の話が多めになってしまいました。 まだまだ紹介したい研究はたくさんあるので、最近の研究を含め、内容はおいおい追加していきたいと思います。

整数スピン鎖における隠れた対称性

Masaki Oshikawa, Hidden Z2×Z2 symmetry in quantum spin chains with arbitrary integer spin, J. Phys.: Condens. Matter 4, 7469 (1992) [被引用件数:227] (2023/4)

記念すべき(?)初めての論文なので思い入れがあるのですが、それだけではなくて、その後の多くの研究のきっかけになりました。 主な内容としては、Kennedy-TasakiがS=1量子スピン鎖について発見した「隠れたZ2×Z2対称性」を引き出す変換の簡潔な表示を 見つけ、これを用いて一般の整数スピン鎖に拡張したというものです。 大学院入学当初、量子スピン系もHaldane予想も何も知らなかったのですが、たまたまM1のときに参加した「物性若手夏の学校」で 田崎晴明さんの講義 (その講義録←入門記事としてお勧め!) に出席して、興味を持ちました。 その後、学習院の田崎さんの研究室にお邪魔して、Kennedy-Tasaki論文のプレプリント(印刷したもの:当時はまだarXivが無かった!) をお借りして、それを見ていろいろ式をいじっていたら、Kennedy-Tasaki変換のうまい表式が見つかりました (翌年の夏、京都の国際会議をモグ…で聴講中、泊まっていた宿で計算していてできた記憶が。)

田崎さんによる、事の顛末

このとき、計算してみると、整数スピンの中でも奇数スピンを持つスピン鎖では隠れた対称性が自発的に破れており、偶数スピンだと破れていない、 結果となったのですが、その意味は長い間よくわかりませんでした。 その後20年近く経った2009年になって、前者は非自明なSymmetry-Protected Topological相 (対称性によって守られたトポロジカル相、SPT相)であることがわかりました。 この1992年の論文の時点でよくよく考えていたらSPT相の概念に到達できたはずなのですが… 出版当時はマイナーな論文でしたが、SPT相の発見にともない、よく引用してもらえるようになりました。 SPT相関連については、また改めて書こうと思います。

第71回仁科記念賞 (2025年11月4日発表)

大変光栄なことに、第71回仁科記念賞を受賞することになりました。 さらに感慨深いことに、上記の「隠れた対称性」を一般化した論文が、Kennedy-Tasakiの原論文とともに 仁科記念財団による業績紹介で触れられています。

仁科記念財団による「業績詳細」より抜粋
仁科記念財団による参考論文リスト
仁科記念財団による参考文献リスト

よく考えると、修士課程在学中の学生が書いた人生初の(かつ単著の)論文が 仁科記念賞の授賞対象になるのはなかなか珍しいかもしれません。

つづき(第2部)